Yahoo!ニュース×本屋大賞実行委員会 ノンフィクション本大賞は、川内有緒さん 『目の見えない白鳥さんとアートを見にいく』に決定

2022年11月21日

 11月11日、Yahoo!ニュースは、「2022年 Yahoo!ニュース|本屋大賞 ノンフィクション本大賞」を発表、ヤフー本社(東京・千代田区)で贈賞式を開催した。全国の書店員の投票によりノミネートされた6作品の中から、川内有緒さんの『目の見えない白鳥さんとアートを見にいく』(集英社インターナショナル)が大賞に選ばれた。

 

(左から)ヤフーの小林氏、白鳥さん、川内さん、佐藤さん

 冒頭、ヤフー株式会社メディア統括本部統括本部長の小林貴樹氏は、「Yahoo!ニュースは情報を届けるだけでなく、時には自ら取材し、少しでもユーザーに気づきを与えられたらと思って発信している」と語り、ノンフィクションの本を同志のように感じ、Yahoo!ニュースと本屋大賞がタッグを組む同賞の意義について語った。大賞を受賞した川内さんには、ヤフーよりトロフィーと取材支援費の100万円が授与された。

 

 川内さんは、「私は希望や夢や愛情をより集めるようにして今まで本を書いてきた。書いたものを石みたいに遠くまで投げても、なかなか届かないのではないかと思うこともあった」と執筆するうえでの苦労もにじませつつ、受賞作が多くの人に読まれ、「今、その石が遠くのほうまで届こうとしていることに心から感激している」と笑顔で喜びを語った。

 

 その後、本に登場する美術鑑賞者で写真家の白鳥健二さん、白鳥さんを川内さんに紹介したアートエデュケーターの佐藤麻衣子さんと川内さんの3人がトークセッション。白鳥さんは「めでたいっ!」と喜びをストレートに表現。佐藤さんは「3人で美術館へ行ったのがきっかけではあるが、本になることや、賞を受賞することは夢にも思わなかった」と声を弾ませた。

 

 川内さんは、最初は白鳥さんに作品を解説するつもりでいたが、「目の見えない人を助けるのではなく、“いっしょに見る”ということに早い段階で気づいた。今までフワッと見ていたものをディテールまで見るようになった」と語り、美術鑑賞しながら意見を交わす3人のことを「バンドメンバーのよう」と表現。今後は、佐藤さんが現在暮らしているオランダなど海外の美術館へ3人で行きたいと語った。

 

「バンドメンバー」のような3人は、終始笑顔で喜びを表現していた

 


著者:川内有緒(かわうち・ありお)さん

1972年、東京都生まれ。ノンフィクション作家。

日本大学芸術学部卒業後、ジョージタウン大学で中南米地域研究学修士号を取得。米国企業やシンクタンク、フランスの国連機関に勤務し、国際協力分野で働く。2010年以降は評伝、旅行記、エッセイの執筆を行う。『バウルを探して 地球の片隅に伝わる秘密の歌』で新田次郎文学賞、『空をゆく巨人』で開高健ノンフィクション賞を受賞。ドキュメンタリー映画『目の見えない白鳥さん、アートを見にいく』の共同監督。