【新型コロナ】書店休業で出版市場に打撃、GW後は営業再開の動き

2020年5月15日

 緊急事態宣言が発令された4月からゴールデンウィークにかけて、各地で大型商業施設に入居する書店を中心に休業が相次いだ。大手取次トーハンの集計によると、営業を継続している店舗には多くの人が訪れて売り上げも増加した一方で、規模の大きい店舗が休業したことで出版市場全体は大きなマイナスとなった。

 

 トーハンによると、取引先書店約1500店(休業店含む)のPOS調査に基づく店頭での売上状況は、4月1~7日は前年同期比4%減と1桁台のマイナスだったが、緊急事態宣言が発令された4月7日から16日は同14%減、17~30日は同22%減と落ち込み幅が拡大した。

 

立地で明暗分かれる、ショッピングセンターは40%減

 

 調査店のうち、営業を継続した約1200店舗の4月実績は同17%増と2桁増加したが、大型店が多い休業店を含めると同14%減と2桁マイナスになった。立地別でも小規模店が多い住宅街が同20%増、商店街が同10%増と伸びたのに対して、駅前が同32%減、ビジネス街が同24%減、ショッピングセンター(SC)が40%減と明暗が分かれた。

 

 ジャンル別では学参・辞典が同16%増、コミックが18%増と好調を維持している。その一方で、地図・ガイドが同70%減、一般書・教養書が同40%減、文芸が同13%減、文庫が19%減となり、特に法律・経済・ビジネスが同31%減、医書が同42%減、理工が29%減と専門書の落ち込みが大きく、大学生が専門書を購入する時期に重なったことが響いたようだ。

 

ゴールデンウィーク後は営業再開が増加

 

三省堂書店は都が定めた「社会生活を維持するうえで必要な施設」に、書店が入ったことを受けて、5月6日以降に一部店舗の営業を再開した(写真は神保町本店)

 

 書店の休業状況は、トーハンの取引先書店は4月の緊急事態宣言で約400店が休業し、全国への拡大で約700店に増加。このうち約相当数が当初の期限だった5月7日に再開するとしていたが、5月4日に緊急事態宣言の延長が発表されて半数ほどが再開を取りやめ、その後、5月中の再開を決めた書店が増えて350店ほどに達しているという。

 

 一方、日本出版販売(日販)の取引書店は5月6日時点で約640店舗が休業していたが、13日時点で約190店舗が再開もしくは再開日を決定し、残る約450店舗が再開日未定の状態だという。

 

 大手書店では紀伊國屋書店が休業していた30店舗ほどを5月7~15日に再開するとホームページで告知。未来屋書店も地方のSC再開に合わせて5月11~15日に約40店舗が営業を再開すると告知した。

 

 5月に入って営業を再開する店舗が増えていることから、4月ほどの落ち込みにはならないとみられるが、トーハンの営業統括部・大西浩平部長は、例え緊急事態宣言が解除されるとしても「7月はオリンピック開催で出版社が刊行を控える傾向があったが、オリンピックが延期されても、今の状況で新たな仕込みができていないのではないか」と商品供給に懸念を示す。

 

 また、夏休み期間中に授業が行われることになれば、売れ行きが期待される夏休みシーズンの人々の購買行動が変化することも想定されるとみている。

 

【星野渉】