【出版時評】2026年4月7日付

2026年4月7日

新人の季節

 

 多くの企業が新年度を迎え、街には初々しい新人の姿が目立つ。昼食時には飲食店に長い行列ができてランチ難民になる困った面もあるが、桜とともに春の訪れを感じさせる恒例の風景だ。


 昔話をすると嫌われそうだが、私が社会人になった80年代終盤は、バブル景気の終わり頃で、出版業界は最盛期を迎える前夜だった。各社が新雑誌創刊のパーティーを大々的に開き、大手出版社は終夜明かりがつく不夜城などと呼ばれた。


 あの頃の新人は、「習うより慣れろ」と先輩の後について、徒弟制のように見よう見まねで仕事を覚えた。飲みに行って怒鳴られたり、何軒も連れまわされたり、ずいぶんと手荒い指導もあった。


 いまや、AIや動画処理ツールなど、新人の方がよほど私より詳しく、こちらが教わっている。隔世の感だ。


 当社は今年創業80年を迎える。昨年から同じように80周年を迎える出版社は多い。主要新聞社は創業から150~130年台が多い。これは、明治維新と太平洋戦争という日本史上最大級の激変期に、多くのメディア企業が誕生したことを示している。多くは当時の若者が時代の最先端の事業として創業した。


 いまは、出版も新聞も、戦後最大の転換期である。そんな時代に業界に入ってくる若者たちには、受け継ぐことより創り出すことを期待したい。【星野渉】