【出版時評】2025年12月2日付

2025年12月2日

トラック新法で改革加速か

 

 6月に成立した「トラック新法(貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律)」は、過当な価格競争を抑えるために国土交通大臣が定める「適正原価」を下回る運賃での契約を禁止する。これによって、取次による出版物の配送運賃が大幅に上昇することが見込まれている。


 トーハンの川上浩明社長は各地で開催したトーハン会で「出版配送が維持できなくなる」と訴え、日本出版販売の中西淳一専務も中間決算発表会で「取次にとって最大の危機になる」との考えを示した。
 実際の施行は公布から3年以内(2028年まで)とされている。ただでさえ業量の減少で積載率が下がり、厳しさが増している出版配送に、新法は追い打ちをかける形になる。


 出版配送は日々、定期的に刊行される大量の雑誌がベースになって成り立ってきた。送品と返品が両方あることも、空のトラックを走らせないという意味で配送コストを抑えることにつながっていた。雑誌の部数が激減し、送品も返品も減る中で、これまでの低コスト配送を維持できないことは言うまでもない。


 もともと雑誌配送を伴わない海外では、書籍の価格が高く、全ての新刊を書店が発注する。日本でも出版流通改革として、欧米型の取引スタイルへの移行が模索されている。「トラック新法」は、改革を一気に進める契機となるかもしれない。 【星野渉】