【出版時評】2025年9月16日付

2025年9月16日

業界DX推進に取り組むPubteX

 

 書店でのRFID普及に取り組むPubteXだが、10月からは株主以外の出版社に向けて「AI発行配本ソリューション」の提供も開始するという。類書の売れ行きなどからAIが新刊・重版の推奨部数などを算出するサービスだが、書店の在庫や配本数なども含めて幅広いデータを活用するようだ。


 当社セミナーに登壇した渡辺順社長は、「AI発行配本ソリューション」について、書店、取次と連携しサプライチェーン全体のデータを集め、さらにRFIDで収集した詳細なデータも活用する予定だと話した。店頭から集まるデータで、出版物の発行を適正化するという発想は、まさにマーケットインだ。


 重版の部決などの際に課題になる「市中在庫」も、在庫の偏在や返品予測などを分析し適正数を割り出すといった仕組みだという。さらに配本数に対する販売数などを見て、書店に「売り伸ばしアラート」を出す機能もある。


 渡辺社長は、こうした仕組みを構築する背景として、出版業界のDXを推進する重要性を強調した。DXは単なる個別のシステム化ではなく、業界全体の事業やビジネスモデル変革であり、他業界のサプライチェーン改革を担当してきた経験から、出版業界でも急務だと指摘。セミナーの最後には、その実現のためには「遠慮せずに発信する」と話した。大いに期待したい。【星野渉】