「つぶや記」2025年9月9日付

2025年9月9日

 東京都練馬区のちひろ美術館へ行った。画家いわさきちひろの個人美術館である。絵本の挿絵、こどもを描いた絵が有名であり、淡い色合いの水彩画が中心だが、眼差しの強さに惹きつけられる絵である。「こども」ではなく「人」として描いている、そんな印象を受けた◆『窓ぎわのトットちゃん』の挿絵は、ちひろの遺作から息子さんが選んだ絵を使用したとのこと。本に合わせて描かれた絵ではないのに、トットちゃんらしい絵なのが不思議である◆訪れた時はちょうど「戦後80年・へいわ」をテーマに世界の絵本画家の原画が展示されていた。原画とはこんなに美しく、力強いものなのか。原画の前で完成した絵本を手にとることができたのだが、この絵本のために画家は心を込めて描いていたのだと改めて認識するとともに、この原画の色合いを損なわないようにするという印刷の大変さも思い浮かんでしまった。 【窪具子】