【出版時評】2025年6月10日付

2025年6月10日

独立系書店を支える書店組合

 

 アメリカの書店組合ABAの2024年年次報告書によると、24年の独立系書店の開業は323店だった。一方閉店は37店。ABAの会員数も437店舗増えて3281店。5年前に比べて1000店以上増加した。


 アメリカでは独立系書店のほとんどがABAに加盟しているといわれるので、書店数の増加が会員数の伸びと比例する。組合への加盟率の高さは、年次報告書にある活動内容を見ると頷ける。


 年に1回開催する「ウインター・インスティチュート」には860人の書店人をはじめ、著者も含めて1700人以上が集まり、多くのセッションや交流会が行われる。4月最終土曜日の「独立系書店の日」には全米で1200店以上が参加し、著者のトークショーなどさまざまなイベントを開催している。


 ABAが会員向けに提供するECプラットフォーム「インディーコマース2・0」は、利用書店1店当たり平均売上が前年比15%増加したというし、ABAも出資するオンライン販売プラットフォーム「Bookshop・org」からは、参加書店に年間550万ドル(約7億9000万円)還元された。


 書店を開業する人たちにとって、こうした活動が魅力的なことは言うまでもない。国によって事情は違うが、資本力や組織力に乏しい独立系書店を、物心ともに支える仕組みは必要だ。  【星野渉】