某月某日
崎陽軒・野並晃社長の話を聞く会。私自身、旅の朝メシは「シウマイ弁当」派である。どの順番で食べ進むか議論するのも楽しい。
1976(昭和51)年に登場したシウマイ弁当100円。「冷めても美味しい」旨さの秘密は、「経木の折」「蒸気炊飯」「干帆立貝柱の旨み」「筍煮」であると。その後、焼売4個から5個になり、鰤は鮪、エビフライは鶏唐揚げ、福神漬けは大根漬けと千切り生姜に代わり、醤油とあんずも添えられ、1070円に。同社が生産する焼売は1日80万個。お膝元の横浜市と川崎市では餃子の消費を上回っているとか。〝横濱名物を作ろう〟と発起した、崎陽軒の心意気やよし。
某月某日
二子玉川ライズの「蔦屋家電」の創業にあたって、企画から設計、運営などのすべてを担ってきた蔦屋家電エンタープライズ・武井総司社長を訪ねる。書籍の利益を補う家電、量販店との価格競争に陥るナショナルブランドは10%にすぎず、ほとんどが「ここでしか売られていない」海外モノ。世界中から直接仕入れ、販売するのみならず、ホテル備品から抽選景品用まで法人向け外商で稼いでいる。
店内に数百鉢あるグリーンのメンテナンスには相当なコストがかかるはず…と思いきや、「ゼロ円です」と。グリーンストアを誘致する際、近郊にあった大型倉庫を廃し、在庫を全て店内にレイアウトしてもらった。ショップは、倉庫の賃料、冷暖房費、運搬の手間とコストがなくなり、店側はタダで緑あふれる空間を手に入れた。
業績好調、そのマーケティング戦略と実行力は見事。改めてインタビューして詳細に紹介したい。
某月某日
『こどものための100冊』に初回から選書を引き受けてくれている尾上菊之助さんに、6月発行の2025年版用のインタビュー。来月11日、朝日新聞にも転載される。菊之助さんとは、私が50歳、彼が30歳の時に『味の手帖』の取材で出会って以来、共に焼肉好きとして、何組かの夫婦連れで時たま食事を一緒している。腰が低く謙虚、人柄もいい。芸技を磨き精進を重ねる好男子である。
インタビューでは、来月から歌舞伎座で行われる八代目菊五郎と六代目菊之助襲名公演に先立って行った神田明神での「お練り」について触れ、「変わらないために変わり続けていきたい」とする神田祭の在り方を歌舞伎のそれになぞらえた。我々も変わらなくては。