【出版時評】2024年3月19日付

2024年3月18日

出版社と書店の直取引は増えるのか

 

 

 出版流通が変化する中で、出版社と書店の直接取引が注目されている。かつては取次からタブー視されていたが、大手取次の日本出版販売も加わるブックセラーズ&カンパニーは、3年で取引の半分を直取引にするという目標を掲げる。

 

 海外では直取引だといわれるが、そんな国々でも書籍卸会社を通した取引はある。ただ、欧米などで直取引の比率が高いことは確かで、直取引の比率はアメリカで書籍流通の8割程度、ドイツでは6割程度という話を聞いた。

 

 一銘柄を多部数仕入れる大手書店は直取引の比率が高いが、1冊単位での仕入れが多い小規模書店などは卸経由が多いという。購入部数が多いと出版社から良い条件を得られたり、冊数や金額で最低発注ロットが設定されていたりするためだ。

 

 直取引となれば、出版社は書店ごとに受注、出荷、請求、入金確認といった作業が必要になる。一方で直取引だからといって売上が増えるわけではない。書店側が返品減少を約束することはメリットだが、仕入れ量が減ったら意味がない、といった声が聞かれる。

 

 ただ、そもそも取次各社が従来のような配本を続けることはない。紀伊國屋書店では高正味といわれる専門書が、取次の配本抑制の影響で直取引になっているという。どのように対応するのかを考えざるを得ないだろう。【星野渉】