【出版時評】2024年2月13日付

2024年2月13日

購読者が1000万人を超えたNYT

 

 米ニューヨーク・タイムズ(NYT)の2023年業績で、デジタルの購読料収入が10億ドルを超えたという。デジタルの有料購読者は970万人、紙版と合わせると1036万人に達する。かつて、アメリカの新聞は日本の全国紙に比べて企業規模も部数も少ないと言われていたが、NYTはデジタルシフトによって、メディアビジネスを転換させたといえる。

 

 NYTというと硬派なニュースメディアというイメージが強いが、デジタル版を伸ばした要因に、クロスワードパズルや料理レシピなど、ニュース以外のコンテンツによる有料サービスへのニーズがある。新聞のサブスクリプション(定期購読)という特性をほかのコンテンツに広げたということだ。

 

 日本には市場拡大を続けるマンガというコンテンツがある。デジタル化によって、世代、性別、さらには国境まで超えてマーケットは広がる。そうした強力なコンテンツを新聞が生かせないかなどとも思う。

 

 NYTが大きく部数を伸ばしたのは16年~17年。トランプ大統領が就任した時期だ。フェイクニュースや大統領と戦う報道機関として購読が伸びたという新聞社らしいエピソードもある。今年の大統領選挙では再びトランプ氏が有力候補として登場しそうだ。このことがNYTのビジネスをさらに後押しするのだろうか。【星野渉】