【出版時評】2023年8月8日付

2023年8月8日

 信号待ちをしているとクラクラしてくるほどの暑さに辟易していたかと思えば、文字通り〝一天にわかにかき曇り〟驚くような豪雨と落雷。しかも東京に竜巻注意報と、否応もなく環境破壊のしっぺ返しを痛感させる天候である。出版市場の低迷ぶりも、それに通ずるように感じる。

 

 出版関係者と会っていると、いまの市況の悪さを「異常」に感じるという声が多い。売れないうえにコストは上昇。書店からの発注量が以前より極端に減って、配架とプロモーションのバランスが崩れているという出版社も。製造原価も上がる中、どう利益を確保するのか日々会議を続けていると。

 

 コロナの巣籠では出版物の需要が持ち直したが、その後、旅行業界などの業績がコロナ前に回復する一方で、出版市場は冷え込んでいる。これは、致し方ない面がある。ただ、書店が多くの在庫を持つことを前提としたこれまでのモデルでは、こうした反動の影響が出やすいといえるかもしれない。

 

 市況の悪化は、出版流通の転換を加速させる。昨今言われている「マーケットイン」や「ドイツモデル」への移行が急速に進めば、従来のモデルで成立してきた仕組みは大きく揺らぐ。しかし、いまの環境は、それが差し迫っていることを感じさせる。異常気象を人類が克服できるかという課題のように。【星野渉】