【出版時評】画期的なビジネスモデル崩壊後の再生

2022年10月4日

 小学生のころ、学研の『科学』と『学習』が届くのが待ち遠しかった。学校で注文用紙が配られて、代金を茶封筒で先生に提出していたが、そのうち、「学研のおばちゃん」が校門の外で渡してくれるようになった記憶がある。

 

 同世代に聞くと、同じような経験をしている。これは、学研の創業者・古岡秀人氏が生み出した「学校直販」という販売方法。その後、学校での販売が問題視され、家庭訪問販売に移行したが、そのことでさらに部数が伸び、当時の子ども2人に1人が読む雑誌に成長したという。

 

 それが、核家族化と女性の社会進出による在宅率の低下や、付録にしていた商材の普及、コンテンツの多様化といった環境変化で急速に部数が減少。90年代には赤字を計上するなど経営危機に。しかし、その後の業態転換で前期まで12期連続で増収を記録。V字回復をなしとげている。

 

 10月1日のグループ再編で、出版を含む教育事業4社を統合して誕生した株式会社Gakkenの代表取締役社長に就任した五郎丸徹氏が、弊社オンラインセミナーに登壇し、この間の経緯や今後の展開について話した。経営危機を脱することができたのは、危機感によって業態転換を果たした結果で、かつて圧倒的であった直販商材はほぼゼロだという。環境が激変してこれまでのモデルが崩れ去るとき、とても参考になる話だった。

【星野渉】