【行雲流水】文化通信2022年7月12日付

2022年7月12日

 某月某日

 

 出版・書店業界の(気持ちだけは?)若手経営者勉強会で新宿「京懐石 柿傳」へ。この夜は、「あなたがもし、茶会に招かれたら…さぁ大変!恥をかかないお作法の基本を学ぶ」と題し、表千家茶道教授から基本的なお作法を手ほどきしていただく。正客の"大役"を最年長の大修館書店・鈴木一行社長がつつがなく務めたあとは、すっぽん鍋がメインの懇親食事会。

 

 私自身、茶道は齧った程度である。父と裏千家の前家元・千玄室大宗匠が懇意だった関係で﹃味の手帖﹄に千宗室家元と、弟で私と同年だった故 伊住政和さんに連載をお願いしていたこともあって、初釜にお招きいただいていた。コロナ前はやはり家元が同年の江戸千家のそれにもお邪魔する、"初釜専門"。毎度お目当ては茶懐石を弁当にした「吉兆」の点心と酒。亭主と客が和やかに盃を交わす「おちゃけの道」を楽しんでいる。

 

 某月某日

 

 ポケトークでおなじみのソースネクスト・松田憲幸社長と﹃味の手帖﹄の巻頭「宮内義彦対談」に同席、ランチを一緒する。松田さん、93年に28歳で日本IBMを退職。96年に同社を創業、08年に東証一部に上場を果たす。その4年後にシリコンバレーに移住。17年に開発したAI翻訳機ポケトークは、様々な学びがあったアメリカでなければ生まれなかったと。そもそも上場企業の社長が10年前から彼の地に在住しているのがスゴイなぁ、と宮内さん。

 

 今やダントツのシェアを誇り、利用客の多くは多様な言語が飛び交う学校や病院、法人で、翻訳精度は日々改良されアップデートされているという。「アメリカ人は英語しか話せなくてもグローバル。日本人が英語学習のために費やす膨大な時間を別のことで有効に使ってほしい」と松田社長。グループ翻訳や字幕合成など、70以上の言語を正確に翻訳する"魔法の杖"の進化はまだまだ続く。

 

 某月某日

 

 7月1日付けで星野渉が社長に就任した。そして組織名から「営業」の2文字を無くした。「マーケティング」と対立軸になりがちな「営業」を意識から抹消したかったのだ。愚直に「貢献」することで結果は自ずとついてくる、所謂「利他」の精神である。

 

 今号発行日には事務所も移転、新装する。舟も漕ぎ手も一新し「心機一転」、社を挙げて「(業界紙)らしくない」取り組みに知恵を絞りたい。一層のご支援を。