【行雲流水】文化通信2022年 5月17日付

2022年5月17日

 某月某日

 

 三省堂書店・亀井忠雄会長による東京新聞「私の東京物語」の連載が面白い。亀井家は駿河ゆかりの駿河台に屋敷を構えた旗本の家柄。同社4代目となる忠雄会長は1943年生まれで慶應義塾卒業後、製紙会社に勤務。独身寮の寮長となり、門限11時を守らせるために当時高価だったカラーテレビを購入してもらう。果たして11PM を観るために門限は守られた、というくだりには笑った。

 

 三省堂書店に入社3年後、73年に東急文化会館(現・ヒカリエ)5階の渋谷店店長に抜擢。元東急マンの私もそこが五島慶太翁の会長室だったことは知らなかった。81年には広さも在庫も日本一となった神保町新本店の店長に。その本店も今月8日に閉店、取り壊しとった。忠雄会長から5代目・崇雄社長に引き継がれ、3年後にオープンする神保町の新たなランドマークが楽しみなことである。


 某月某日


 シーベジタブル友廣裕一共同代表による海藻の話と料理の会へ。


 日本近海に生息する海藻は約1500種。毒は無くほぼ全て食べられるのだが、昆布やわかめ、海苔、ひじきなどせいぜい20種類程
度しか口にされていない。そして近年、瀬戸内海では藻場の面積がこの30年間で7割減少したという。特に海水温の上昇により生息域が北上したアイゴやウニによる食害が深刻で、「海のゆりかご」といわれる藻場が食い尽くされて「磯焼け」し、海藻に寄生・共生するバクテリア→エビなどの小動物→小魚→大型魚といった生態系が絶たれてしまっているのだ。


 友廣さん、タンパク質やミネラル、ビタミンを豊富に含む海藻を養殖することで食糧危機の克服にも貢献したいと熱く語る。海の森による大気の炭素吸収(ブルーカーボン)も約4割ある。今宵、新たな環境問題に気付かされた。


 某月某日


 行動制限のない久々のゴールデンウィークである。高尾へ墓参りに向かうが凄まじい渋滞で早々に高速を降り、神代植物公園へ。バラや躑躅、藤など初夏の花々に誘われ、95歳の母もよく歩いた。


 ゴルフは都合3回。ベストスコアを大幅に更新した妻に" 百獣の王"は手も足も出ない。3年ぶりの公演となる「團菊祭五月大歌舞伎」にも。このところ身辺の騒がしい海老蔵の「暫」は少々稽古不足か。「土蜘」で菊五郎、菊之助、丑之助、三代が魅せる芝居で口直
し。満場の拍手喝采、鳴りやまず。

 

【文化通信社 社長 山口】