【出版時評】20年前の新書が10万部突破

2022年4月5日

 桜の花も満開となり、新年度が始まった。多くの人が新しい場所、生活、仕事に向けて心を弾ませているであろう。

 

 しかし一方で、コロナは再び感染が増えている。世界各国で感染は広がっても社会活動は止めない方針のようだが、すっきりしない。加えてウクライナでは戦争が続いている。

 

 ウクライナについては、この間、新聞やテレビ、ネットニュースなどで多くの情報が流れ、関連する出版物も重版を繰り返している。

 

 「穀倉地帯」ぐらいしか思いつかないのは多くの日本人に共通していたようだが、あまり知らなかった地域だったからこそ情報を得ようとするのだろう。

 

 これまでも紹介された本がベストセラーになってきた中田敦彦さんのYouTube大学でも、ロシアのウクライナ侵攻についてたびたび取り上げている。

 

 その中で紹介された中央公論新社『物語 ウクライナの歴史』(黒川祐次)は、20年前に刊行された新書だが、にわかに話題の「スキタイ」や「キエフ・ルース公国」について詳しく紹介されていて、今の状況に合わせて書かれたのではないかと錯覚してしまうほどだ。

 

 20年で3万分ほどだった部数は、3月1カ月で7万分を重版して10万部を突破。人々の知りたいという欲求にこたえている。

【星野渉】