【出版時評】業界の「枠組み」が変化

2022年3月7日

 電通が発表する「日本の広告費」で、2021年はデジタル広告が前年比21・4%増の2兆7052億円となり、新聞、雑誌、テレビ、ラジオのマスコミ四媒体広告費を上回った。コロナ禍による前年の大きな落ち込みの反動でマス4倍体とも前年比プラスだったが、ネットがそれを上回る伸びだった。

 

 同調査でインターネット広告費が1兆円を突破したのは14年。19年には2兆円を超えマス4媒体最大のテレビを抜いた。ちなみに、21年のネット広告費のうちマス4媒体由来のデジタル広告は1061億円で、こちらも前年比32・1%増と高い伸び率だ。

 

 講談社は前期決算で過去最高益を計上したが、電子書籍の売り上げが690億円(前期比30・2%増)に達し、初めて紙の書籍・雑誌の売り上げ662億円を抜いた。近年、デジタルを中心とした事業収入が拡大してきた同社だが、いよいよ収入の大きな柱がデジタルになってきたといえる。

 

 大河ドラマの"源平"は言うに及ばず、かつての主役が衰退し、新たなものに取って代わられる「無常」こそ世の常。もちろん、その中で既存プレイヤーも新たなツールを使って成長するが、市場全体はこれまでとは違ったプレイヤーが牽引していたりする。業界再編の流れを認識してはいても、自分の中の「業界」の枠組みを変えるのは難しいと感じる。

 

【星野渉】