【出版時評】めまぐるしく変わる書店業績

2021年12月7日

 有隣堂と紀伊國屋書店が発表した前期決算は、いずれも厳しかったその前年から一転して増収増益となった。コロナ禍で厳しかった店売の反動があり、有隣堂は学校向けの外商、紀伊國屋書店は海外店舗と電子コンテンツが増益要因となったという。

 

 2020年は都市型の大型店舗やショッピングセンターのインショップ型店舗が休業などで大きな影響を受けた一方で、生活圏にある小型店舗は巣ごもりによる特需が発生したが、そこからも状況はめまぐるしく変わっているのだ。

 

 有隣堂が大幅な増収になったのは、「GIGAスクール構想」によるタブレット端末の案件獲得によるものだった。コロナ禍で進んだ教育の変化を反映したといえる。紀伊國屋書店も大学向けの電子書籍や海外データベースの納入が好調で、やはり教育のデジタル化が加速していることを示している。

 

 一方で、地域の小中高校への外商が強い書店では、休校によって学力テストや夏休みの課題が軒並みなくなり、大きな打撃を被ったという話もある。タブレット導入の案件は増えたが、マイナスを補えないという。

 

 変化がこれほど早いのは感染症のせいではあるが、これからのデジタルシフトを先取りして経験しているとも言える。荒い波だがうまく乗りこなさなければならない。         

 

【星野渉】