【行雲流水】文化通信2021年11月30日付

2021年11月30日

某月某日

 アスク出版の天谷修身社長より中川政七さんのインタビューを読んだ、会いたいと電話。早速飯田橋駅に近い同社を訪問する。

 日・英・中・韓に加えベトナム語の語学教材を制作・発行し、取次を介さぬ書店との直取引の先駆けとして、返本ゼロ、在庫を持たぬ安定経営基盤を築いた天谷社長。徳間書店勤務時代に企画したカセットテープと語学書を組み合わせた商材の開発経験が今日の礎となっている。近年はオンライン模試やeラーニングなど、デジタルの取り組みにも注力。グローバル化はもとより、今後急増するであろうアジアからの労働人材に対する日本語教育のニーズはますます高まるはずと、ターゲティングの妙に感心したことである。

某月某日

 有隣堂・松信健太郎社長の肝いりで、プラスの今泉忠久社長の話を伺う。プラスといえば、最近ヒットしている「富士山消しゴム」や「フィットカットカーブ」のはさみなど、アイデア豊かな文具メーカーのイメージが強いが、独自の代理店システムで急成長したアスクルの生みの親であることはあまり知られていない。ちなみに有隣堂はアスクルの代理店として全国ベストスリーに入る規模の取り扱いを誇り、書籍販売事業の不振をカバーしてきたという。

 アスクルのビジネスモデルは「業界内の商慣習」「多くの重複行為」「高コスト・長時間」を打破することで、CS(顧客満足)とSS(供給者満足)を同時に実現することを起源とした。同社が量販店やコンビニの文具棚の品揃えの改善から販促支援まで手がけるのも同じ発想から。今、活字業界にも求められる「SS」である。

某月某日

 東急時代、47歳から3年間社長として立て直しに悪戦苦闘した〝古巣〞の後輩たちが来社する。当時新人ながら老け顔と太々しい態度から「課長」とあだ名されていたK君が、ホンモノの課長になっていて思わず目を細める。

 相談の内容は、東急線の駅ホームや改札横の売店を丸ごと広告でラッピングし、店内では特設棚で当該商品を販売できるというパッケージの営業。採算が厳しい狭小店舗のコの字の壁面や、時短営業でラッシュ後に下ろしたシャッター面を丸ごと広告面にする。建前は販売促進を目的にしたものなので、媒体価値としてはかなり格安な提案となっている。ご興味があればご一報を。