集英社の前期決算は売上高が2000億円を超え過去最高を記録した。単独出版社の2000億円超えは、1990年代中頃の講談社を除くと希有だろう。もちろん『鬼滅の刃』が大きく貢献したが、ベストセラー1作だけの成果ではない。
特に大きく売り上げを伸ばしたのはコミックスと電子書籍だが、書籍も72%以上増加し、前年マイナスだった物販も同44%以上の伸びになった。『鬼滅の刃』関連書籍や、キャラクターグッズの販売が大きい。
ヒットをコミックにとどまらせず、多面的に展開したことが全体の売り上げを大きく押し上げた。しかも、同作に続いて『呪術廻戦』などヒットが出ているのは、編集部が日々コンテンツ作りに取り組んでいるおかげだろう。
さらに、全体としてはマイナスになった広告も、デジタル広告は40%近く伸び、デジタルが紙を上回った。こちらはマンガアプリの広告や、ファッション誌のデジタル連動が伸びたという。
雑誌広告については「エディターズ・ラボ」といった取り組みに加え、各編集部にウェブ担当を配置するなど、さらにデジタルを強化している。
同社の最高売上は、強いコンテンツの力を最大化するために、従来とは違う試みを重ねた結果であり、多くの出版社にとっても無縁とは言えないだろう。
【星野渉】