【出版時評】受け入れやすい「本を贈る」こと

2021年6月28日

 日本図書普及の昨年度図書カード発行高が6年ぶりに前年比で増収となった。コロナ禍の家庭学習支援で自治体が児童に図書カードを配ったことなどが大きな要因だ。

 

 大阪府は府内の幼稚園や小中学校、高校などに通うすべての子ども約100万人に対して、1人2000円分の図書カードネットギフトを、総額で20億円配布した。これにより広告オリジナルカードのうち図書カードネットギフトは前年比2475・8%増と約25倍に達した。

 

 大阪府の事例がきっかけになり、各自治体でも同様の取り組みを進めるところが現れ、約40の自治体で図書カードが支援策に採用されたという。あまり良い意味では使われない役所の「横並び」だが、こと図書カードの活用は出版業界にとってはありがたいことだった。

 

 本以外の商材であったら、いち業界を利するとして、なかなかこうはいかないだろう。特殊な状況下にあったとはいえ、本を贈ることがこれほど広がるのも珍しいが、別の見方をすれば、何かのきっかけさえあれば、本を贈ることは多くの人々に受け入れられやすいということでもある。

 

 一方で、書籍を揃える書店数(国内の書店数)とほぼイコールの図書カードリーダー導入店舗数は減少を続け7755店となった。本を贈ることが定着し、書店の支えになることを望みたい。

 

【星野】