【出版時評】AI活用と「配本権」

2021年5月24日

 大手出版社が丸紅と新会社を設立するというニュースが、一部で取次事業に参入すると報じられたこともあり業界関係者を驚かせた。産業の仕組みが変わろうとしている時期の業界主要プレイヤーによる動きが注目を集めるのは当然である。

 

 もちろん、大手出版社が新たな「出版取次」を立ち上げるということではないだろうが、各社が「紙の本」の流通(サプライチェーン)に強い危機感を持っていることは確かだ。

 

 新会社の内容や事業はまだ明らかになっていないが、発表文ではAIとRFIDを活用して「出版流通全体の最適化を目指す」としている。このうちAIは取次各社も仕入・配本への活用を研究している。

 

 当方はそもそもAIがどんなものなのかも皆目わからないが、日々発生する書店店頭のPOSやその他の販売、流通情報など大量のデータを解析して需要予測などを行うイメージだろうか。

 

 ずいぶん前に取次会社の幹部が「配本権」という言葉を使い物議を醸したことがあった。市場を把握して供給の鍵を握ったものがイニシアティブを握るということを表した言葉であっただろう。いまネット販売のプラットフォーマーが強大な力を持つのもそのためだ。これから誰が「配本権」を握るのか。AIの活用が不可欠になるのかもしれない。

【星野】