【行雲流水】文化通信2021年4月12日付

2021年4月12日

 某月某日

 来週発行の小紙・創刊記念号に掲載する「トップインタビュー」で明治大学の齋藤孝教授にお話を伺う。上梓する本の多くは言葉や活字文化の大切さを説いたもので、その想いは、この夏に実施する「こどものための100冊」キャンペーンと軌を一にしている。

 「絵本というのは感情や情緒を育てるのに非常に優れている。とりわけ大事なのは親と一緒に読める小学生までの間。親子で共感をもってその世界に入り、楽しみながら能力、読解力が育つ」「インターネットでも文字は読めるがそこに人格がどれだけあるのか。本は踏めない。なぜなら人格だから。人格と向き合う時間が大変大切」「新聞社や出版社、書店は活字文化を支える最後の砦。町の書店は教養の拠点として何としても守り抜くという、市民の思いが集まる場所にすべき」などなど。

 本が1冊1冊、木のように心の中に生えていくと森になる。「本で心に豊かな森をつくろう」。素敵なスローガンまで頂戴した。

 某月某日

 中央経済社ホールディングス山本憲央社長の肝いりで、法政大学経営学部の教授で日本マーケティング学会の副会長でもある西川英彦教授に話を聞く。西川さんは、専らマーケティング関係の書籍を出版する碩学舎の代表取締役のひとりでもあり、山本さんとは事業上のパートナー。私自身、大学時代にマーケティングの村田昭治研究会の末席を汚していたが、やはりケーススタディは面白い。

 「二日酔いに効く」から「シミそばかすにも効く」として若い女性に販路を拡大した『ハイチオールC』や、「スプーン一杯で驚きの白さ」など洗浄力で競い合う中もともと備わっていた除菌効能を訴求した『アリエール』の躍進などは「リポジショニング」の成功事例。昨秋冬の「ギフトブックキャンペーン」も、「自分で読む」から「人に贈る」という「既存資源(=本)の再解釈」なのであった。

 某月某日

 4月より中国・遼寧省は撫順市出身の孫維君29歳が入社。2年半ぶりの新人である。

 中学卒業後に来日。日本語を学んだ後、関西学院大学では学生新聞の発行やスポーツ新聞の校閲などを経験。大学卒業後は工具の販売会社で販売職に就いていたが、やはり活字業界に関わりたいと小社ホームページの「ジョブボード」に応募してきた。若手たちのためにも、いま少し頑張らねば。

【文化通信社 社長 山口】