【出版時評】書店のデジタル武装を支える取次会社

2021年3月29日

 出版流通大手のトーハンと電子書籍流通大手のメディアドゥが資本提携を発表した。〝紙〟と〝電子〟のプラットフォーマーがお互いの強味をどのように活用し合うのかが注目だ。

 

 世間からは新勢力が旧勢力に割り込むように見えるかもしれないが、時代の流れの中で書店がデジタル武装しなければならないのは当然だし、電子書籍の販売に圧倒的に大きな市場である紙の本の読者へのリーチが重要であることも、アマゾンが世界の電子書籍市場でトップシェアを持つことからも分かる。

 

 電子書籍を1冊単位で印刷して提供するオンデマンド出版で、世界最大の企業はアメリカの書籍流通業者イングラムの子会社だし、ヨーロッパ最大手はドイツの書籍流通業者リブリの子会社である。

 

 さらにイングラムはの小規模書店の団体が組合員に提供しているネット販売サービスにインフラを提供し、リブリ社は取引先の書店のネット販売を請け負うサービスを行っている。リブリ社は書店での電子書籍販売「トリノアライアンス」に中小書店が加盟する窓口も務めている。デジタル時代の取次とは、書店にデジタルプラットフォームを提供することが大きな役割なのである。

 

 日本の大手取次はこれまでそれほどデジタルサービスに力を入れてこなかったが、その転換を期待したい。

【星野】