【行雲流水】文化通信2021年3月15日付

2021年3月15日

 某月某日

 このところあわただしい日が続く。昨年11月から2个月間、全国約1500書店が参加し開催した「ギフトブック・キャンペーン」の第2弾、「こどものための100冊・キャンペーン」の実施に向けて走り回っている。

 家庭環境の変化やSNS、ゲーム時間の拡大により、言葉や活字に触れる機会が減少、こどもたちの国語力が著しく低下していることが様々な統計のもと有識者により指摘されている。「子どもたちの未来のために、よい本をたくさん読んでもらうきっかけづくりをしたい」という想いに賛同する、子育て中の著名人・経営者や主要書店の児童書バイヤー、図書館司書が選ぶ「こどものための100冊」をカタログに掲載し、書店や保育園などで無料配布してもらいたいと考えているのだが・・・。

 某月某日

 栗の郷、信州小布施の『小布施堂』の市村次夫社長にインタビュー。小布施町は人口11000人、過疎へ向かう長野県で最小の町だったが、市村さんが82年から手掛けた「町並み修景事業」によって今や110万人もの観光客が訪れる町となった。建築家の宮本忠長氏をコーディネーターに立て、古い町並みを単に保存するのではなく、生活・生産・商業を美しい景観のもとに混在させた。

 観光客を誘致しようとしなかった。建築雑誌に掲載すると建築・デザイン系の人々が、さらに「国際北斎会議」や12年間毎月開催した「小布施ッション」に多くの文化人や知識人が訪れた。結果、リピート率は長野県一となる。

 新栗の時季に本店のみで味わえるモンブラン「朱雀」は連日大行列。9月末の訪問を約す。

 某月某日

 東日本大震災から10年である。三枝成彰さんと林真理子さんが立ち上げた「3・11震災孤児遺児文化スポーツ支援機構」では支援を希望する子どもたちを「塾生」として、基礎学力の強化や進学・就職相談、音楽・スポーツに興味のある子たちには必要なサポートなどの支援を続けている。

 毎年3月11日には「全音楽界による音楽会」チャリティーコンサートが開催される。芸能・音楽系に疎い私でも知っている、五木ひろし、川井郁子、氷川きよし、服部百音、ジョン・健・ヌッツォ、平原綾香、森山良子のほか総勢26の個人・団体がボランティアで参加。会場のサントリーホールは暖かな空気に包まれる。

【文化通信社 社長 山口】