【出版時評】ジェフ・ベゾスがCEO退任へ

2021年2月15日

 アマゾンを創業したジェフ・ベゾスがCEOを退任するという。世界屈指の巨大企業を一代で築いたのみならず、人々の生活や社会の形を大きく変えるデジタル革命の立役者のひとりでもある。特に小売業にもたらしたインパクトは大きい。「Amazom」という社名とともに歴史に名をとどめるであろう。

 

 個人的には同じ1964年生まれ(彼は1月生まれで日本風に言えば学年はひとつ上)なので勝手に親近感を抱いているが、もちろんお目にかかったことはない。しかし、日本上陸以来、日本法人の人々とは取材を通して会うことも多い。そこで感じるのは、創業者のビジョンが隅々にまで行き渡っていることだ。

 

 創業者や中興の祖と言われるような経営者が率いる組織には、同じような風土が生まれやすい。いくら組織で動いているとはいえ、やはり人間が動かしている以上、善し悪しは別にして、トップのビジョンや熱量が原動力になる。歴史上の英雄が活躍する話も、あながち絵空事とはいえないのだろう。

 

 ベゾス氏は引退するわけではないというが、気候変動対策や宇宙事業、そして新聞事業(『ワシントン・ポスト』)などにも力を振り向けるという。米国の成功者は莫大な資産を社会還元することがお約束のようだが、これらの分野、特に新聞事業でどのようなイノベーションを起こすのか注目している。

【星野】