【出版時評】まだ多いトライアンドエラーの余地

2021年1月25日

 蔦屋書店は、直営店とフランチャイズ店舗779店舗が加盟する「TSUTAYA BOOK NETWORK(TBN)」の書籍・雑誌年間販売額が1470億円で過去最高になったと発表した。既存店だけで前年比10%増というから、確かに出版物の販売が伸びたということだ。

 

 かつてTSUTAYAというと、ロードサイドや町中で青地に黄文字の看板が目立つ若者中心の店舗という印象が強かった。扱う商材もレンタルビデオが中心で、出版物は客数を増やし、客層を広げるための商材だったが、最近は蔦屋書店やTSUTAYA BOOK STOREといった出版物を中心とした店舗が多くなっている。社名も昨年、㈱蔦屋書店に変更した。

 

 売り上げを伸ばしている背景には多くの施策がある。説明を聞いていると1時間は優にかかるほど、店頭施策から空間施策、在庫政策、アワード開催まで次から次へという印象だ。フランチャイズビジネスだから、店舗オーナーに向けて絶えずさまざまな業態を生み出し、策を提示しなければならないという危機感があるのだろう。書店業にはトライアンドエラーを繰り返す余地がまだまだあるということだ。

 

 出版社と契約して低返品率・高粗利益を実現する「買切スキーム」も目標を達成し、さらに拡大するという。こうした「流通改革」も危機感を背景に確実に進めているようだ。

【星野】