【出版時評】存在感を増すコミック

2020年12月14日

 今年の新風賞はブレイディみかこ『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』(新潮社)が選出された。2019年6月に刊行された書籍だが、同賞が対象書籍の刊行年制限をなくしたことで受賞した。特別賞には爆発的ヒットとなっている集英社のコミック『鬼滅の刃』を選んだ。

 

 これまでコミックは上位10作品にも入ったことがなかったというが、1次投票では『ぼくは~』に次ぐ得票数を得たという。店頭活性化に貢献した出版物という同賞の趣旨からすれば、受賞は当然ともいえる。いまやコミックスが書店店頭を支えていると言っても過言ではない。

 

 大手取次2社が発表した年間ベストセラーは、1位から4位までが異なっていた。同タイトルが順位違いで入っているとはいえ、一見してこうも違うかと思わされたが、両社とも雑誌であるコミックスを総合ベストに入れていないからだ。

 

 別の見方をすると、今年はコミックス以外で群を抜く売れ行きの書籍がなかったともいえる。それでも『鬼滅の刃』の小説版が1~3位に入っているのだから、この作品の爆発力のすごさを物語っている。

 

 マンガは、作品の質も市場規模も世界トップであり、他国にも多くの読者がいる。これまで対象にならなかったコミックスだが、そろそろ「総合」に入れても良いのではないか。

 

【星野渉】