【行雲流水】文化通信2020年11月2日付

2020年11月2日

 某月某日

 東京即売・臼田隆弘社長と「虎ノ門横丁」へ。臼田さんとは東急時代、駅売店など駅ナカ事業を運営する関連会社に出向していた15年前から、夜の新宿でたびたびご指導いただいている。眼光鋭い切れ者オーナー経営者と、人懐っこい眼で熱く語る趣味人としての魅力を兼ね備えている。一年前はジャズにハマっていたが、最近はブルースがいいんだよと。

 今春コンビニ各社から好条件を引き出した途端にコロナ禍に見舞われる。書店同様、巣籠り需要があるのでは?と訊くも、野球をはじめゲームがないからスポーツ紙が壊滅的、配送コストが重いと。しかし弱音はここまで。京都老舗料理屋の「贅沢弁当」を販売すると、変化球を繰り出す巧者ぶり。

 横丁内で間違いなく最年長のオヤジふたり、三軒ハシゴする。

 某月某日

 大阪出張の後、京都へ。エスコヤマの小山進シェフの紹介で「ユキフラン佐藤」で夕食。ここの大将、やや偏屈だが料理はウマい。

 翌朝、小雨ふりそぼる中、ギフトブック・キャンペーンで選書の労をお執り下さった裏千家・千玄室大宗匠へ御礼のご挨拶に伺う。

 大宗匠が選書された「文明の衝突と21世紀の日本」(集英社)は20年前に上梓され、数年前に一読したが、今世界が直面するイスラム、西欧、中国の三つの文明衝突と多極化を予見。そのはざまで孤立する日本の選択について示唆に富むものであった。特攻で多くの戦友を見送らざるを得なかった大宗匠だからこそ、一椀に世界平和の願いを込めてこられた憂国の想い。いま一度紐解いてみたい。

 某月某日

 新星出版社の富永靖弘社長の友人であるTONEGAWAの利根川英二社長を囲んで赤坂維新號で会食。利根川さん、小社の目の前に自社ビルオフィスを持ち、湯島・本郷を皮切りに地域の活性化に取り組む、マーチング(=まち+ing)をライフワークとしている。街の風景を切り取ったイラストを無償で貸し出したり、はがきにして郵便局などで販売するなど、細やかな活動を全国に広げることで地域の誇りを取り戻し、日本の魅力を再発信したいと話す。

 大阪都構想には失うものが多いと反対する。江戸時代には300近い藩があり、東京市には35区あった。成熟社会の今、安易に効率を求めるのではなく、まずは足元の街に目を向けるべきと語る熱意に共感することしきりである。

【文化通信社 社長 山口】