【行雲流水】文化通信2020年10月19日付

2020年10月19日

某月某日

 先月に続き今月も国立劇場で歌舞伎を鑑賞。明治の名優、五代目尾上菊之助のために書き下ろされた世話物の名作「新皿屋舗月雨暈」で、当代菊五郎演ずる魚屋宗五郎が杯を重ね酔っ払う様は見どころ。女房役はお馴染み時蔵。左團次さんは少し弱られたか。

 続く「太刀盗人」では尾上松緑がとぼけたスリを好演。太刀を盗まれた坂東亀蔵演じる田舎者とどちらが本当の持ち主か判ずるやりとり、この手のユーモラスな役どころは松緑の真骨頂である。

 コロナ禍にあって、歌舞伎座も国立劇場も上演時間が短縮され2時間半程度とちょうどいい。今回の演目はオススメ。27日まで。

某月某日

 神戸は三田の「エスコヤマ」の小山進オーナーシェフと久々に会う。神戸元町のワインバー「リシュリュゥ」で、シャンパーニュと白ワインで勢いをつけ、小山さんイチ押しの中華「二位」に。

 湯引きした黒鮑に雪のようにかかる葱ソース、マンゴーソースをあしらった海老マヨ、ズワイガニのミルク炒め。レタスのエスニック炒めでリセットし、蟹と絹豆腐、卵白の煮込み、和牛サーロインとセロリのXO醤炒め。そして締めは葱汁そば。いずれも食感と香り、五味のリズムが素晴らしい。これは予約が取りにくいはずと納得。

 世界のコンクールで最高賞を獲得してきた小山さんの創味工夫の原点は、国内外で食べ歩いてきた名店の味なのである。

某月某日

 「虎ノ門横丁」にあるイベントスペースで開催中の「サッポロ一番劇場」で夕食。イタリアンと中華のシェフが監修したコースメニューのすべてに「サッポロ一番」の麺やソースが使われている。

 「はくさいしいたけに~んじん♪季節のお野菜♪…」と麺をジュレで固めたテリーヌに始まり、醤油ラーメンの麺と干し豆腐、きくらげの春巻き、発酵白菜の酸味と豚バラ肉の旨味を麺に吸わせた包み焼きと続く。さらに「羊のムサカ」には小麦粉の代わりに麺を使ったホワイトソース。麺を伊勢海老に巻いて揚げ、海老ミソと味噌スープを合わせたチリソース。そして締めは、ポルチーニ茸をふんだんに使ったつけ麺。

 このイベントスペース、店や企業の利用希望が相次ぎ、先々まで予約が入っているという。連日賑わうこうした場での「食」をテーマにしたPRの取り組み。新聞・出版業界でもアリかもしれない。

【文化通信社 社長 山口】