【出版時評】“一寸先は闇”なのか

2020年9月28日

 報道によると、9月の4連休は各地の観光地や繁華街が多くの人出で賑わった。長期にわたって遠出やレジャーを自粛してきた人々が、「GoToトラベルキャンペーン」などをきっかけに、一斉に発散したということか。

 

 もちろん、感染症がなくなったわけでも、画期的な対処方法が見つかったわけでもないから、人が動けば再び、三たび、感染者が増えるだろう。実際に移動制限が緩和されたヨーロッパの各地では感染者が急増しているようだ。

 

 それでも日本政府は、死亡率や重症化率を抑えることで、なんとか乗り切ろうということか。しかし、もし4月のような移動制限が実施されれば、多くの書店が打撃を受けることになるだろう。

 

 人々の生活圏に近い書店は緊急事態宣言下でも売れ行きは好調で、その後も好調を維持しているところも多いと聞く。一方で、ターミナル駅周辺や都心にある大型書店は厳しい状況が続いているという。人々の移動が活発になれば、こうした書店への来店客も増えるかもしれないが、もし移動制限などの措置が発動されたら元も子もなくなる。

 

 この厄災は、旅行業のように好調だった業種が一転して不振に陥ったり、思わぬ事業の需要が急増するなど、文字通り一寸先が闇であることを思い知らされた。そういう意味で、あまり先回りして不安や期待を抱いても仕方ないのだろうか。

 

【星野】