【行雲流水】文化通信2020年9月21日付

2020年9月23日

 某月某日

 半年以上ぶりの歌舞伎座である。初代吉右衛門ゆかりの狂言で、世話物の名作といわれる「双蝶々曲くるわにっき輪日記 引窓」を観る。現実にも義理の親子である中村吉右衛門と尾上菊之助が、家族の情愛の交差する舞台を見事に演じる。

 コロナモードの客席は市松の配置。隣と前が空いているのでゆったりと快適。一幕入替制は平常時の長丁場に向けた〝ならし運転〟にちょうどいい。次幕、玉三郎の「鷺娘」は久々に観たかったが…。

 余韻を楽しむ早めの夕食は、銀座「南蛮銀圓亭」で。ビシソワーズにコンソメのジュレが入った同店のスペシャリテ「パリソワ」のあと、トリッパのトマト煮、ホタテのテルミドール、パンプキンクロケット。メインはビーフカツレツを。ワインはサンセール。

 某月某日

 朝日新聞社での打ち合わせのあと、築地「はいばら2号店」でランチ。愛知県三河産のうなぎを白焼きにした後、蒸し上げ、たれで焼き上げる江戸前の蒲焼である。

 「串打ち3年、裂き8年、焼き一生」といわれるが、主役の鰻はもとより、重要な評価ポイントは山椒とご飯にある。さしずめ同店が使用する山形県産つや姫が助演女優賞なら、大粒の実をミルでゴリゴリかける和歌山県有田のぶどう山椒は名脇役といった趣か。うな重(梅)2500円は、お値打。

 某月某日

 『味の手帖』宮内義彦対談に同席する。ゲストはワークライフバランスの小室淑恵社長。10年前に取材した当時は産休中の社員のケアプログラムを企業に提供していたが、今や働き方改革全般のコンサルティングを行う傍ら、文科省「中央教育審議会」や内閣府「子ども・子育て会議」などの委員を務める〝時の人〟である。

 小室さん、先週「男性の育休」(共著/PHP)を上梓。内容は未読だが、出産後の体調が回復するひと月ほどは育児や家事のサポートをすることが望ましいと聞く。韓国では、食事とベビーシッター付きの「産後院」がその役目を担っていて、ジジババが喜んでその費用を負担しているらしい。

 少子化対策に話がおよび、宮内さん、第1子に100万円、第2子は300万円、そして第3子には1000万円を支給すれば解決すると。フランスも同様の取り組みで成果を上げているが、他人の子を3人目と称して1000万円を詐取する輩が現れそう、と勘繰るのは韓流ドラマの見過ぎか。

 

【文化通信社 社長 山口】