【出版時評】総額表示の矛盾を解消できないのか

2020年9月23日

 総額表示義務を免除していた特別措置法の期限切れまで半年に迫った。総額表示といえば、消費税導入の1989年を思い出す。旧定価表示品が大量に返品され、出版社は倉庫で新定価シール貼りに追われ、多くの在庫が断裁処分された。大きな社会問題となり、行政訴訟も起きた。

 

 今回も杓子定規に従えば混乱を生じる可能性があるし、乗り切ったとしても、税率変更のたびに繰り返される。そのために総額表示義務が導入された2004年に業界団体が財務省と折衝を重ねて捻り出した解決策が「スリップのボウズ」への表示だった。

 

 当時、スリップの総額表示を知っていた消費者がどれだけいたのか。ということは、実質のない苦肉の策だったのである。

 

 このときは、書店が非表示在庫を返品することはなく、今回も財務省担当者の発言からは同様と考えても良いだろう。しかし、4月1日以降に店頭で本体価格のみを表示した商品があることが違法状態であることに変わりはない。

 

 商品自体に「定価」表示をしなければならないことと、変化する税額を含めた総額を表示することに矛盾が生じることは、消費税導入時の大混乱が証明している。

 

 半年に迫ったとはいえ、この矛盾を解消することはできないものか。スリップを認めたということは、財務省も矛盾を認識していたということでもあるのだから。

【星野渉】