【出版時評】“小さな書店”目指す世界最大チェーン

2020年8月31日

 新型コロナウイルスの感染症が人々の生活に影響を及ぼすようになって、はや半年が過ぎようとしている。テレワーク、オンライン会議、ウェビナーといった仕事の仕方が当たり前になりつつある。

 

 消費も大きく変わっている。旅行業が大きなマイナスになる一方で、商品によっては生産が追いつかない状態が続く。この環境下でどのように事業を進めていくのかを考えることは、もはや一時的な対応ではない。

 

 世界最大の書店チェーンであるバーンズ&ノーブルは、1000坪を超える店に椅子やソファーを並べ、カフェ、キッズコーナーを備えたスーパーブックストアを展開し全米を席巻したが、アマゾンとの競合などで経営が悪化した。

 

 現地メディアによると、昨年同社の立て直しを期待されて就任したジェームズ・ドーントCEOは、小さな店のチェーンを目指しているという。今年6月にはニューヨークの店のひとつを、規模が大きすぎると閉店し、近くに小規模店舗を探している。

 

 ドーント氏がそうした戦略をとるのは、規模とともに、本を愛し、地元の人々を理解する人が管理する「独立系書店」がアマゾンとの競争に生き残っているからだという。

 

 我が国でも緊急事態宣言下で多くの人が地域の書店を利用した。書店が環境変化を味方に付けられるかどうかが問われている。

 

【星野渉】