【出版時評】10年ぶりの書協理事長交代

2020年6月29日

 日本書籍出版協会(書協)の理事長が10年ぶりに交代した。新任の河出書房新社・小野寺優社長は1964年生まれなので来月の誕生日で56歳。今年は延期になってしまったが、ちょうど前回の東京オリンピックが開かれた年の生まれだ。

 

 歴代の書協理事長は下中彌三郎(平凡社)、野間省一(講談社)、下中邦彦(平凡社)、服部敏幸(講談社)、渡邊隆雄(二玄社)、朝倉邦造(朝倉書店)、小峰紀雄(小峰書店)の各氏、そして相賀理事長。野間家の縁戚だった服部氏も含めると、オーナー系が続いた。小野寺氏は全くの非オーナーとして初の理事長であろう。

 

 オーナー経営者は次世代も含めた長期的な視点で業界のことを考えるだろうし、自社についての意思決定もできるので、団体トップに向いていそうだ。そんな中で、新理事長に求められることは何なのだろうか。

 

 むしろ、激変期において喫緊の課題に素早く対応することだろう。もちろんそれにも長期的視点は大切だが、これまでの流れを気にせず変える飛躍力も必要になる。

 

 さらに、コマーシャルベースの雑誌やコミックスをほとんど出していない書籍出版社という点もポイントだろう。物流やプロモーションなど大きく変わらざるを得ない書籍出版の新たな構造を、どのように構想するのかが問われている。

【星野渉】