【出版時評】書店がネットを武器にできれば

2020年4月13日

 緊急事態宣言が発令された地域では、多くの書店が休業している。テナントとして入居する書店は館の決定に従うことになるが、判断に迷うケースも多かったようだ。

 

 そんな中、移転早々に休業を決めざるを得なかった東京・下北沢の本屋B&Bは、オンラインストアを開いた。店主の内沼晋太郎氏は、そのことを綴った「ビールの飲める本屋が、ゼロからはじめること」で、「まだAmazonなどでは売っていない」デジタルリトルプレスを販売すると書いている。

 

 欧米で都市封鎖された地域ではベルリンなど一部を除くと、書店も休業を余儀なくされている。そんな中、アメリカのニューヨークにある独立系書店のウェブをみると、オンラインでの販売や著者イベントなどをアピールしていた。

 

 ドイツでも多くの独立系書店が自分たちのオンラインショップの認知度向上に取り組んでいるという。両国では、いずれも大手取次が小規模書店のウェブショップを支えてきた。緊急時に書店がそれを活用して、お客がAmazonに流れないようアピールしているのだ。

 

 一方、日本で今回の措置に伴っていくつかの書店に話を聞いたが、B&Bのサイトを除いては、オンライン販売など店舗以外のサービスを打ち出すという答えは極め少なかった。こういうときにデジタルの武器を持っているか否かは大きい。

【星野渉】