【出版時評】周回遅れが先頭になる?

2020年3月16日

 「パンデミック」というハリウッド映画で見たような状況が現実になっている。映画であればCCD(アメリカ疾病管理予防センター)のヒーローが、2時間以内にワクチンを開発してめでたしとなるのだが、現実にはそんな劇的展開はない。

 

 出版業界でも世界最大の児童書展示会「ボローニャ国際児童図書展」、そして春の国際版権取引の舞台である「ロンドンブックフェア」が中止となった。夏の北京国際図書展、秋のフランクフルトブックフェア、この先どこまで続くのか。

 

 海外で春や秋に大きなブックフェアが開かれてきたのには理由がある。翌シーズンに発売する書籍を、書店などに向けて事前プロモーションする場にしていたからだ。春であれば秋からクリスマスシーズン、秋であれば翌春以降の新刊をアピールする。

 

 欧米ではこの時期にカタログやプルーフ版などを作って書店への事前営業を行ってきたが、最近はこうしたカタログなどを電子化している。紙で大量に作って送る手間やコストを減らすためだ。

 

 インターネットの普及で版権取引の場としてのブックフェアの意味が薄れてきたといわれるが、書店販促も電子化の方向だ。そんな時期、日本では書店に電子的に近刊を含めた書誌情報を届ける「BooksPRO」が稼働した。周回遅れが最先端になる可能性もある。

【星野渉】