【出版時評】コミックに続く分野は?

2020年3月9日

 コミック市場は前年比12・8%増と大きく伸びた。電子コミックが29・5%増と3割拡大し、いよいよ紙の単行本と雑誌を合わせた売り上げを抜いた。さらに電子コミックは広告収入などもあるので、全体の収入はさらに大きいことになる。

 

 デジタル技術によるメディアの変化は、コミックというコンテンツの可能性を広げている。音楽や映像などあらゆるコンテンツがデジタル化され、同じデバイスで利用されるようになっても、コミックには競争力がある。

 

 さらに、かつての作品が脚光を浴びたり、年配の男性が少女コミックを読むなど、紙媒体だけだったときよりも作品が容易に時代や読者の性別・年齢を越えていく。明らかに読者の幅と数を増やしている。

 

 しかも、この特性は国境も越えていく。大手出版社や電子書店、電子取次などは、海賊版対策という目的もあって、電子コミックを海外の読者に提供できるサービスを拡大している。課題もあるが、紙の本を輸出したり翻訳出版することに比べればハードルはとても低い。

 

 コミックスとコミック誌を合わせた売り上げは1995年の5864億円がピークだったが、電子を合わせてこれを抜く日も遠くなさそうだ。コミックは電子という強力な成長エンジンを獲得したが、他の出版分野にも広げたいものだ。

 

【星野渉】