【出版時評】インフラは変化に間に合うか

2020年2月17日

 日本出版インフラセンター(JPO)は、出版情報登録センター(JPRO)が3月に開設する書店向け「BooksPRO」の説明会を相次いで開催しているが、いよいよ日本の出版業界でも書籍の刊行前に書誌情報を流通サイドに提供する体制が整う。

 

 JPROは2015年に開設されたが、ただちにその意義が広く受け入れられたわけではない。当初はむしろピンとこない業界人の方が多く、出版社からは、「また余計な仕事が増える」といった反応すらあった。

 

 しかし、大手取次各社が搬入予定日の連絡など本格的にJPROのデータを活用すると表明したことで、一気に出版社の登録が進んでいる。2年ほど前まで月に1桁台だった出版社の登録は、今年1月は60社と急増している。

 

 背景には流通の変化がある。出版社が取次各社に搬入すれば、あとはほぼ自動的に配本される仕組みが大きく変わることが明らかとなり、取次や書店、さらには読者にまで事前に情報を伝える必要性が出てきたためだ。

 

 かつて、出版業界で出版社、取次、書店間での電子データ交換が進められた時も、当初は冷ややかな態度が多かった。しかし、その後の市場低迷期に書店の販売データを収集する仕組みがなかったら、と考えると空恐ろしい。今回も流通変化に業界インフラが滑り込みで間に合いそうだ。

 

(星野渉)