【行雲流水】文化通信2020年2月3日付

2020年2月3日

某月某日

 日本地域紙協議会の新年会に初めて出席する。ローカル紙・地域紙と呼ばれるものの全容は把握が難しく、200紙近くは存在するようだが、発行部数を公表しているものは約150紙あり、合計約300万部。その内、日刊紙は90紙ほどで、3千部から8万部を超えるものまで規模は様々だが、合わせると180万部発行されている。全国紙や県紙との併読が多いが、地域に深く根を下ろしていて精読率は極めて高いと言われている。

 

 会長を務める「市民タイムス」新保力会長が、さらなる連帯を呼びかける挨拶で会がスタート。新参者ゆえ名刺交換に終始するが、小紙新年号「トップインタビュー」に登壇した小山薫堂さんから同級生と聞いていた、熊本・人吉新聞社の石蔵尚之社長が出席していて、人吉焼酎「白岳」のくまモンボトルの話に。八重山日報社代表取締役の宮良薫さんとは、その昔、石垣市公設市場前のジャズバー「すけあくろう」で奈良在住の友人・池原君と「白百合」(池原酒造)を飲んでいたら、ギターをつま弾く同社・池原社長と遭遇したというたわいない話を。宮良さん、私と同様、他業界から転身したとあって、俯瞰してみる新たな取り組みの可能性を語り合う。

 

某月某日

 『味の手帖』巻頭対談。ホストのキッコーマン・茂木友三郎名誉会長がお招きするゲストは、JTBの田川博己会長。田川さん、最初に配属された別府支店で、温泉客に楽しんでもらうための時間・空間を提供する実践経験を積む。その後、海外営業部次長となった当時、売り上げが拮抗する高額商品「ルック」とやや廉価版の「パレット」の両立がわかりにくいと、ブランド認知度の高いルックに一本化する大ナタを振るう。支店長などの抵抗を個別に撃破し、宣言通り取り扱い5割増を1年前倒しで達成。何かを捨てる勇気を持たないと新しいものは生まれないと確信。

 

 地方の持つコンテンツは宝であるとも。全国の支店網は単に旅行取扱窓口にとどまらず、日本全国、そして全世界からその地域に人を呼び込む“宝探し”も重要なミッションと位置づけ、支店に勤める地元の従業員こそがデスティネーション・マネジメント・システム(DMS)の触覚であり情報源と語る。地域に深く根ざす新聞各社にとってもDMSはキーワード。知恵を絞りたいものである。

 

某月某日

 『味の手帖』の取材が続く。この日はナベプロ・渡辺万由美社長とゲスト、ゲッターズ飯田さんとの「昼膳交遊録」。上梓する「五星三心占い」本はどれも100万部以上のベストセラー。印税をはじいてみれば大変なオカネモチである。占いでお金をもらうことはなく、ケーススタディ、事例調査だという。

 

 ベストセラーの秘訣を伺う。書店でどの本をどの場所に置くかは店のスタッフが決めていることが多く、彼はその店員たちを占ってあげることで感謝され、ファンとなって一番いい場所に並べてくれるようになるという。書店回りにチカラを入れる著者は少なくないが、占ってあげるというのはマネのできない必殺技である。私も見てくれたが、基本性格は「正義感あふれるリーダーだが根は甘えん坊」、お金は貯まらない、心は高校1年生のまま、不思議な人脈を持つ、おだてに弱い、などご託宣。当たらずとも遠からず…かな。

(文化通信社 社長 山口)