【出版時評】出版流通は「送る」から「選ぶ」に

2019年12月9日

 いま出版流通が迫られている変化は「送る」から「選ぶ」への転換と表現することができる。出版社が取次会社を介して書店に配本する供給の仕組みを、書店が選んで仕入れる形にするということだ。

 

 そうなると、書店は「選ぶ」ための体制を整えなければならないし、出版社は「選ばれる」ように営業やプロモーションに力を入れなくてはならない。いずれもこれまでよりも人手も手間もかかることになる。

 

 既刊本の補充については相当程度自動化も可能であろう。大手ネット書店では需要予測のシステムを使い、季節変動なども含めてほとんど人の判断が入る余地がない正確な数を発注するという。しかし、新人の初めての著書や、あまり類書がない新刊などは難しそうだ。

 

 書店の仕入れは、やはり人の力が大きい。そういう人材をどのように育てるのか、人件費をどうやって吸収するのか、そもそもどのようなスキルが必要なのか、探らなければならないことは多い。

 

 しかも、今のようにのべつ新刊が案内される状況では、書店の仕入担当者は忙殺される。新刊を事前発注で仕入れている欧米の出版業界では、新刊を春と秋の年に2回受注している。仕入担当者が発注すると、あとはそれぞれ発売日に合わせて注文した数だけ配本されるのだ。そんな形も考えなくてはならないだろう。

(星野渉)