【地方から「活字力」発信】140B 厚い信頼の「編集力」、「面白いモノつくってナンボ」

2021年4月21日

「大阪の出版活動にメリットは多い」と語る中島さん

 

 出版のシステムや、出版社数の全国割合など一層の東京一極集中が進む中、編集集団140B(大阪・北区)の中島淳社長兼出版責任者は、「出版物の製造(執筆、編集、印刷)から販売までの仕組みが首都圏に集中し、版元の8割が東京というだけ。本の中身の8割が『東京化』しているわけではない。むしろ、売るためにヘイト本に手を出すような出版事情と距離を置けて、仕事はしやすい」と、東京の出版姿勢に手厳しい持論を述べる。

 

 1958年生まれの中島氏は大学時代に雑誌『SAVVY』や『Meets Regional』などで知られる京阪神エルマガジン社でアルバイトをした流れで同社に入社。「大阪本」、「日帰り名人」などの人気シリーズも手掛けた。

 

 『Meets―』を立ち上げ、編集長を務めていた江弘毅氏らと2006年、140Bを設立。「江と一緒ならもっと面白い本が出せる。その可能性にかけた」と当時を振り返る。江氏は、その後も関西の食関連本を中心に他社刊行を含め数々のヒット作を生み出している。社名は、「3年で取り壊し」と期間限定のため低賃料で借りたかつての「ダイビル」(北区中之島)の部屋番号「140B号室」から名付けた。

 

ターニングポイントとなった『月刊島民』

 

 同社は「編集集団」とも名乗り、官公庁や企業の広報誌、社内報などの編集業務を請け負う。08年、京阪電車「中之島線」開業を機に、同社は京阪沿線を盛り上げる試みとしてフリーマガジン構想を電鉄側に提案し、『月刊島民』が誕生した。

 

 また、大阪市都市工学情報センターの月刊誌『大阪人』の編集も担うなど、同社の収益はこうした制作物が支えになった。現在は予算縮小や、橋下徹市長時代の改革などにより休刊しているが、中島さんは「『水都大阪再生』が掲げられ、追い風になった。

 

 安定経営の一助になり、ありがたいボーナス期間だった」と話す。現在も自治体などから編集力の信頼が厚く、区役所の広報紙(誌)などに関わる。近年、制作物と出版物の売り上げは、8対2で推移している。

 

新刊は大阪24区の歴史

『古地図でたどる大阪24区の履歴書』

 

 直近の推薦本は『古地図でたどる大阪24区の履歴書』(本渡章)。「二度にわたる住民投票など世間を騒がした『大阪都構想』だが、そもそも大阪市24区の成り立ちなど知らない人も多いでのでは。古地図などを随所に活用してわかりやすく解説している」とし、「古くから大阪に住む地元の人をはじめ、地理、歴史に興味がある小中高生でも楽しめる」と推奨する。

 

 本渡氏は古地図収集家でもあり、同社から4冊目の作品。17年刊行の『古地図で歩く大阪ザ・ベスト10』は、地元読者ら中心に大きく動いたという。中島さんは「単なる大阪関連本では意味がない。地元の人から『こいつらよくこんな事まで書いているな』と唸らせるぐらいでないと当社の存在意義が失われる」とこだわりを見せる。

 

大阪は「ネタ」の宝庫

 

 生まれは九州の中島さん。小学6年のとき大阪の堺市に転居。「関西住まいが圧倒的に長いが、ふと『よそ者』と感じるときがある。そのことが関西文化を俯瞰的に見ることができ、バランスの取れた本づくりができている要因かも知れない」と話す。

 

 大阪での出版活動について、「大阪の本を大阪でつくって大阪で売るのに東京の販売会社と部数交渉し、首都圏の倉庫に搬入して出荷される。この点はかなり面倒だが、あとは大阪での出版はプラス面しかない」とポジティブに捉え、「大阪の街や書店をまわっていても新しい発見ばかりで『ネタ』は尽きない」と中島さん。そういった書店を紹介する連載企画「街と書店、大阪の場合」を同社ホームページで開始している。

 

 経営者としての思考より、本づくりのことばかり考えてしまうという中島さん。

 

 最後に「やっぱり面白いモノをつくってナンボの世界。自分たちがつくった本をまったく知らない人が買ってくれたり、刊行から何年も経っているのに読者が感想を寄越してくれる、こんな独特の快感がたまらない」と熱く語っていた。

□『古地図でたどる大阪24区の履歴書』=A5判並製、232㌻、2420円

【堀雅視】