【出版時評】400億円規模の出版社が誕生

2019年10月28日

 日経BPと日本経済新聞出版社は経営統合により、今の規模をそのまま合算すれば売上高が400億円、社員数は800人を超える出版社となる。書籍・雑誌を中心にする単独の出版社としては大きな規模になると言える。

 

 かつて日経グループには、両社のほかに日経ホーム出版社や日経事業出版社なども存在し、日経ナショナルジオグラフィックなど取次口座を持たない出版社も多く、新聞社としては多様な出版機能を持ち、さらにデジタルメディアやカスタム出版など広域な出版活動をしてきた。

 

 日経BPは当初、アメリカの大手出版社マグロウヒルとの合弁で設立し、取次・書店を通さないアメリカ式のサブスクリプション(定期購読)モデルで数多くの専門誌を発行する独自のマーケティングで成長した。

 

 その後、市販誌に進出し、最近では販売データを分析しプロモーションに生かす取り組みなどで『FACTFULNESS』のようなヒットが相次ぎ、書籍部門の売り上げも伸ばしている。経営統合で書籍部門だけで年商90億円になるという。

 

 これまで日本では資本が独立した比較的規模の小さな出版社が数多く存在してきたが、デジタル化や海外事業などの展開や、流通環境の変化に伴って集中度が高まりつつある。それを先取りした動きの一つだともいえる。

(星野渉)