【出版時評】「独立系書店」が多い日本

2019年10月15日

 「独立系書店」という言葉がよく使われるようになったのはいつ頃からだろうか。以前は「中小書店」とか「零細書店」といわれていたお店をこう呼ぶことで、プラスのイメージを醸し出しているような気がする。

 

 「インディペンデット・ブックストア」の訳語だと思う。文字通り独立した書店という意味だ。日本では小規模書店を指すことが多いようだが、書店の規模には関係ない。

 

 「独立」は資本が独立しているという意味であり、上場していたり、他社資本の傘下だったりしない書店だ。南ドイツで54店舗を展開するオジアンダーや、3000坪近い本店を持つアメリカのパウエルズ・ブックスも独立系書店である。

 

 取次や印刷会社の傘下に入る書店が増えたとはいえ、実は日本にはまだ独立系書店が多い。中小書店の数は減ったとはいえ、諸外国に比べるとまだ多いと思われるし、紀伊國屋書店、有隣堂、三省堂書店、くまざわ書店などは店舗の規模が大きかったり、店舗数が多くても立派な独立系書店といえるからだ。

 

 日本に独立系書店が多く残っている理由は、取次という平等な供給システムのおかげや、定価販売によって価格競争が起きにくかったことなどが考えられる。ただ、状況は大きく変わった。これからの「独立」は「頑張って生き残る」という精神的な意味になるかもしれない。

(星野)