【出版時評】大幅に減少した電子雑誌市場

2019年2月4日

出版科学研究所による昨年の年間販売動向は、紙は5・7%減、電子は11・9%増と、相変わらず電子の伸びが目立つ。分母が小さいこともあるが、電子コミックは1965億円と、紙のコミック市場2583億円(2017年)に迫りつつある。その中で、電子雑誌が9・8%減と大幅な減収になった。NTTドコモの「dマガジン」の会員数が減ったためだという。

 

「dマガジン」は月額400円で200誌以上が読み放題になるサービスで、会員は300万人を超えた。仮に300万人で計算すれば、年間収入は144億円。電子雑誌市場の7割を超える。

 

同様のサービスが他にもある中で、「dマガジン」だけが会員を集めた背景には、「レ点」営業があった。スマホの契約時に、お試し加入の項目に「レ点」チェックすることをいう。要は、意識しないで通信料金と一緒に料金を払い続けている人が多かったわけだ。この販促方法ができなくなったようなのだ。

 

雑誌紙面を電子化しただけのビジネスには、それほど市場性がないことははっきりした。一方で、日本経済新聞の電子版は有料会員が60万人を突破している。同グループの日経BPも、月額2500円の『日経ビジネス電子版』をスタート。経済専門情報の世界では、本格的な課金モデルが広がりつつある。

(星野渉)