【出版時評】ドイツで2位の取次が破産

2019年2月25日

大手取次2社が改革へ向けた体制整備を本格化させている。日本出版販売は今年10月に持株会社制に移行し、出版取次業をはじめ、事業を9分野に分ける。トーハンは「AI推進担当」「仕入プラットフォーム構築担当」を設置、4月から始まる中期経営計画に向けた布陣を整えた。

 

一方、日本の出版流通が目指す方向性のひとつとしてあげられるドイツの出版業界で、第2位の取次KNV(Koch.Neff .Volckmar)が破産したというショッキングなニュースが入ってきた。

 

管財人のもとで事業は継続しているようだが、取引先の出版社には昨年クリスマスシーズンの仕入代金も払われていないという。欧米では、このシーズンの売り上げが年商の半分近くを占める場合もあるので大ごとである。

 

破産の原因は、新設した物流センターがうまく稼働せず、従来の施設とダブルコストがかかり、膨れあがった借り入れを返済できなくなったようだ。最大手取次のリブリが、出版社支援に動いているという情報もある。

 

KNVの年商は600億円程度。リブリも本社と流通センターを併せて1000人未満と、日本の大手取次に比べると小規模だ。書籍市場が比較的安定しているドイツでも、経営のミスは恐ろしい。日本の両取次の改革が次の時代の出版流通をどう描き出すのか注目だ。

(星野渉)