【出版時評】減る書店と増える書店

2019年3月18日

書店が減っていることについては、本紙でもたびたび取り上げてきた。特に昨年1年間の新規店数が、アルメディアの調査史上最低の84店にとどまったという出店意欲の低迷は、閉店の多さ以上に書店の未来を暗くする。ただ一方で、ごく小規模な書店を開業する個人や、異業種小売が書籍の販売を始める例は増えているようにみえる。

 

大阪屋栗田の少額取引「Foyer(ホワイエ)」の取引先は増えており、小出版社の取引代行を行っているトランスビューや、書籍などを卸す子どもの文化普及協会、神田村卸の八木書店などへは、書店を開きたいという問い合わせが頻繁にあるという。

 

早稲田大学の文化構想学部に「書店文化論」という講座があるのだが、ここ3年ほど毎年100人を超える受講者が集まる。しかも書店に熱い思いを持っている。全学生に占める割合は少ないにしても、書店に興味を持ったり、自分でもやってみたいと思う若者が一定程度いるのだ。

 

もちろん、増えているとはいえ、小規模な書店や異業種小売が販売する本の量は、通常の書店には及ばない。消えていく書店が失った規模を支えることは出来ないだろう。

 

しかし、書店という事業がいまも求められているのは確かだ。新しく書店を始めたいという思いを産業としてすくい上げ、育てる発想を持てば、書店の未来も少し明るくなるように思う。

(星野渉)