【出版時評】改良が需要を生み出す

2019年6月17日

最近、高齢ドライバーによる急発進や逆走など痛ましい事故のニュースを目にする。注目を集めているため、以前なら取り上げられない程度の事故もニュースになっている面もあるだろうが、いまの日本の日常では、自動車が最も危険なものだろう。

 

報道などを見る限り、こうした事故の多くで、アクセルとブレーキの踏み間違いが発生している。そもそも加速と停止という正反対に機能するペダルが、すぐ隣にあるということがおかしい。ずいぶんこなれた技術だと思ってきた自動車も、まだ完全な道具にはほど遠いということだ。

 

慣れた作業でも、改良されて初めて気付く不便さがある。改良が行われると、「なんでいままでこんな不便なことをしていたのか」と気付かされ、かえって利用が進むことも多い。インターネットサービスの多くがそうだ。

 

このところ進みつつある「JPO出版情報登録センター(JPRO)」の刊行前情報や、NetGalleyでの事前ゲラ配信なども、これまでなかった情報が伝わることで、需要を喚起する効果を生む思われる。

 

出版社にとっては、作業が増えると思われるかもしれないが、情報が伝わることで、実際に「いままでなかった」と歓迎する書店人もいる。いまプロモーションに注目が集まっているが、まずは誰にでもできる基本的な登録がその第一歩である。

(星野渉)