文化通信社は10月30日、ダイヤモンド社のビジネスメディア局長兼週刊ダイヤモンド事業室長・山口圭介氏を招き、オンラインセミナー「『週刊ダイヤモンド』サブスク誌化の狙いと現状 紙雑誌を残すためのデジタル戦略」を開催した。

オンラインでセミナーを行う山口氏
ダイヤモンド社は2025年4月、112年間にわたり発行を続ける『週刊ダイヤモンド』の書店での販売を取りやめ、サブスク誌(定期購読)化へとかじを切った。
プロジェクトを主導した山口氏は、はじめに「今もまだ試行錯誤を繰り返す発展途上の状態」と前置きしたうえで、今回の取り組みとその背景について語った。
『週刊ダイヤモンド』はビジネス週刊誌として32年連続で書店売上トップを維持してきた。しかし紙媒体を手がけるメディアを取り巻く環境は厳しく、「27年頃には週刊誌市場自体が消滅する」という危機的な予測シナリオも現実味を帯びてきた。そこでメディアとしての生き残りを模索し、同社の改革プロジェクトチームを立ち上げたのが18年。「紙からデジタルへの収益構造の転換が絶対的に不可欠」として一気にデジタルシフトを加速させてきた。
改革にあたり、最初に着手したのが編集部組織の再編。さらに編集部員の意識改革、多彩なスキルをもった人材の結集、記事の入稿フローやコンテンツ配信を“デジタルファースト”に移行するなど、取り組んできたさまざまな業務改革について解説した。
現在「ダイヤモンドオンライン」は、月間PV 1.1億、無料会員137万人を維持。19年にスタートしたデジタルの有料サブスクリプションサービス「ダイヤモンド・プレミアム」会員は5万人に迫っている。
そのなかで浮上した問題が、紙の『週刊ダイヤモンド』を書店購入する読者のニーズと、「ダイヤモンド・プレミアム」の購読者のニーズが乖離(かいり)しているという点だ。紙雑誌の読者にはライフスタイル系特集の人気が高く、「ダイヤモンド・プレミアム」の中心ユーザーであるビジネスパーソンは企業・産業系の硬派なコンテンツを評価する傾向があった。それにより生じている「編集部のリソースのまた裂き状態」を解消するため、社内で議論を重ねた結果、「ビジネスリーダー層をターゲットに王道コンテンツの追求に注力する」という結論になったという。
そして、編集部のリソースをサブスク事業に集中させる狙いに加えて、『週刊ダイヤモンド』のブランド維持のために紙の雑誌を発行していくことの重要性をふまえ、「収益とブランドのバランスを図った結果、サブスク誌化という選択に至った」と説明した。
リニューアルにより、表紙や紙面のデザインもスタイリッシュに一新されたうえ、読者のセグメントが明確になり広告事業としてもメリットが大きいと期待される。
山口氏は最後に「さまざまな問題にメスを入れることで大きな傷みを伴うとしても、事業転換をやりきる覚悟があるか」を重要なポイントのひとつとしてあげ、「社内外を含め関係者が覚悟をもって改革に取り組んでくれたことに感謝している」と締めくくった。
〈セミナーアーカイブ視聴申し込み受付中〉
アーカイブ視聴料:8,800円(税込)
お申し込み、
〈今後のセミナー〉
12月11日(木)15:00〜16:30
阪神コンテンツリンク・ビルボード事業本部・
申し込みはPeatix:https://peatix.com/event/4668986
1月22日(木)15:30〜17:00
ブックセラーズ&カンパニー 後藤崇氏・野上由人氏による「ブックセラーズ&カンパニーの仕入と店舗の実態―持続可能な書店モデルを目指す現場からの報告」を会場とオンラインのハイブリッドで開催する。
オンライン開催の申し込みはPeatix:https://peatix.com/event/4673860
会場開催の申し込みはPeatix:https://peatix.com/event/4690649
※会場開催はセミナー後の17:15〜19:15に懇親会を開催する。
