文化通信社は10月23日、大垣書店代表取締役会長・大垣守弘氏を招いたセミナーをリアルとオンラインのハイブリッドで開催した。

セミナーを行う大垣氏
大垣書店は京都を中心に51店舗を展開し、2024年度の売上高は154億4000万円(前年比0.2%増)。「知的興奮カンパニー」をスローガンに、書籍に加えて文具・雑貨・カフェを融合した複合型店舗を展開している。大垣氏は「本を売るだけでなく、顧客に新たな発見を提供する情報発信基地としての機能を強化している」と語り、店舗ごとにさまざまなイベントを開催する一方、タウン誌『KYOTOZINE(キョウトジン)』を発行し、情報発信によって地域とのつながりを作っていると話した。
京都市男女共同参画施設のリニューアルに合わせ、書店と教育・地域交流を結ぶ新拠点の構想も進行中だという。大垣氏は「本を中心に、地域住民や子育て世代がつながるコミュニティーを形成したい」と述べた。
地方書店の存続と地域の読者のために11年に立ち上げた書店協業会社「大田丸」では、現在11法人が共同仕入れや販売データ共有などを行う。POSデータを活用したデータ交換サービス「ODS」では、120書店の販売・返品動向を翌朝に出版社へ共有し、供給効率の最適化を図る仕組みを構築。80社超の出版社が参画しているという。
また、大田丸加盟書店・約120店舗の書店員が「もう一度売りたい、おすすめしたい文庫」を投票で選び、ノミネート10作品を販売し、最も売れた作品をグランプリとする「BUN-1グランプリ」や特典付きコミック販売企画「コミラ」など、販促イベントによる差別化も進めている。
さらに、大垣氏は韓国とフランスの書店事情を視察。韓国では出版都市「パジ・ブックシティ」の整備や書店出店への補助金など、政府によるリアル書店支援が進んでいると紹介した。フランスでは書籍の送料無料禁止や18歳を対象に文化費300ユーロを給付する「カルチャーパス」制度が導入されているとし、「本を文化として守る仕組みづくりが日本でも必要」と指摘した。
また、今後の書店のあり方として「書店スタッフの体系的な教育プログラムが緊急に必要」と話し、地域社会へ貢献するスタッフを育てることが大切であることを強調した。「われわれとしては、お客様に喜んでもらうという気持ちが自然に湧いてくる環境を作ることが大切」と話し、今後、店舗の運営や作業効率を上げるためのトレーニングプログラムを独自に開発し、大田丸で共有していく予定だという。
最後に「書店はコミュニティーと文化活動の拠点。書店からさまざまなことを発信してほしい」と締めくくった。

セミナーは日比谷セントラルマーケット 一角から配信された
〈今後のセミナー〉
12月11日(木)15:00〜16:30
阪神コンテンツリンク・ビルボード事業本部・
申し込みはPeatix:https://peatix.com/event/4668986
