有償化に手応え
各新聞社が教育現場向けのデジタル教材提供を進める中、今春、発足した「全国地方新聞社デジタル教育推進協議会」には地方紙20社以上が参加するなど新聞社によるデジタル教育参入の注目が高まっている。
徳島新聞社も昨年度から小中学校向けの新聞活用学習支援サイト「あわスタ」の展開をスタートさせ、無償期間の現在、徳島県下24市町村のうちほぼ全域23市町村の小中学校で活用され、将来的な有償化に手応えをつかんでいる。
小中学生1人1台の教育用タブレット端末が配付された「GIGAスクール構想」を受けて、徳島新聞社が2021年から開発に着手。徳島のホームページ制作会社と連携して新聞記事を活用したデジタル教材「あわスタ」を開発した。
「あわスタ」は、徳島新聞の記事を検索・閲覧できる「記事アーカイブ」と、記事を活用した「教科書対応ワークシート」の二本柱から構成されている。「アーカイブ」と「ワークシート」の頭文字と、県民に親しみを持って活用してもらえるよう「阿波」の意味も込めて「あわスタ」と名付けた。
新聞の信頼度+記事のルビ好評
アーカイブは現在、徳島新聞の記事6000本以上が収録され、地域別やカテゴリー別に検索できる。地域は「徳島県」をはじめ、「日本」「世界」の記事まで保存。ほか、「SDGs」「文化」「平和」「防災」「伝統」など多様なテーマを盛り込み、幅広い学びを可能とした。小学校低学年でも支障なく使えるよう、ひらがなでも検索でき、記事の漢字にはすべてルビを振った。
スタート時は、過去2年の記事をベースとしたが、学習に適していると判断されれば、それ以前のニュースも採用し、古いものでは1990年代の記事もデータ化しているという。記事は毎日、数本ずつアップロードされるが、蓄積できる点もデジタルの強みと言える。
ワークシートは、国語と社会の県内採用教科書に準拠した内容で、同社のNIEコーディネーターや大学教授らが作成した新聞記事と連動した単元のワークシートを教員専用ページから選ぶことができる。
「あわスタ」の運営・管理は、デジタル推進局デジタルマーケティング部から2人、メディアNIE・NIB推進室から6人のスタッフで担っているが、全員、従来の業務と兼務で進めている。
学校関係者からは「信頼できる情報なので調べ学習に適している」「必要な情報が絞られているので、子どもたちも調べやすい」「ルビ付きがありがたい」など好意的な声が寄せられている。
徳島新聞メディアNIE・NIB推進室・笠井由紀室長は「現在、導入校の使用状況などを調査中。結果を踏まえて有償化のあり方を検討したい」とし、今後の動きについては「『あわスタ』の利便性、読解力向上、課題を見出す授業に適する点をいかに多くの先生や生徒に理解され、使っていただけるかに尽きる。いっそうのプロモーションに力を入れたい」と話している。【堀雅視】